みんなで知ろう! インボイスってなに!?
インボイスってなに!?
話題は聞くけど正直よくわからない、そんな君でも大丈夫! 優しい先生や森の仲間たちと一緒に、インボイスについて楽しく学ぼう!
―某日、とある森Xにて―
こんにちは。僕は勉学(ベンガク) ハゲム。村に住んでいる、普通の子供だよ。
今日は友達の真偽(シンギ) ウノミくんに誘われて、森の奥深くまでやってきたんだけど…
お、ここだ!
ゲダイ先生、こんにちは!
ギィィィ……
やぁ、こんにちは。要件は何かな?
ゲダイ先生にも、署名を協力してもらいたくて。
署名……?
これ!
悪い政治家の人たちが、インボイス制度っていう悪い制度を始めようとしてるんだ。
あ、聞いたことある!
でも、インボイス制度って悪いことなの?
悪いことだよ! 悪徳政治家たちが、何の罪も無い庶民から、お金を巻き上げようとしてるんだ。
……どうかな? 先生は、政治家みんなが、庶民を虐げようとしているとは思えないな。
でも、政治家は税金を上げたりインボイス制度を導入したりして、私腹を肥やそうとしているって、みんな言ってるよ!
うーん……
世の中は、そんな簡単な構造をしているわけではないと、先生は思うな。
ウノミ君は、インボイス制度がどうして悪いことなのか、説明できるのかな?
えっ……?
で、でも! Twitterでたくさんの大人が、悪いことだって言ってたよ!
悪いことをやめさせるために、署名っていう、僕たちにもできることをするんだ!
バリバリバリッッッッッッ!!!!!!
ぎゃぁぁあああああ!!??
ウノミくん!!!!
「みんなが」「大人が」ってよぉ~~……
自分自身で調べて判断しようとは思わねぇのかよ~~!?
ゲ、ゲダイ先生……!?
そうやって、自力で調べようともせず、声の大きい人間に言われるがままに煽動されて、お前の人生それでええんか!?!?
………!?……えっ……?
ただ既存の権力に逆らっただけで、あたかもこの国の未来について考えてるような気になりやがってぇ~~……
……すぞ……
先生……?
そんなインスタントなイデオロギーでこの国の未来が明るくなったら、誰も苦労しとらんわなぁ!!!!
うわぁあ!! ごめんなさい~~!?
ウノミくん!!!!!!
先生!! ゲダイ先生落ち着いて!!
ふーっ……! ふーっ……!
……いや、すまないね。ついカッとなってしまったよ。
…………。
ウノミくん、ショックで気絶しちゃってる……
おやおや、可哀想に……。魔法で治療して、小屋の中に寝かせておこう。
10割先生のせいなんだけど……
さて。ハゲム君は、インボイス制度について、どれくらい知っているのかな?
え? うーん、新しく始まる制度で、困る人がたくさんいるらしい、ってことくらいしか……
まぁ、子供なんてそんなもんだろうね。
さっきのウノミ君のように、よく知りもしないまま、大人たちの言うことを鵜呑みにしてしまわないよう、今日は先生と、インボイス制度について学んでいこう!
でも、難しそうだなぁ……
大丈夫!
君たちみたいに、まだまだ人生経験も情緒も脳ミソも足りてない、そんな子供たちにだってわかるよう、細かいところは簡略化して、簡単に説明するからね。
ゲダイ先生、子供嫌いなの?
嫌いじゃないよ。子供はみんな成体未満のなり損ないだし、だからこそ保護されるべき存在だと思っているよ。
登場人物紹介
ゲダイ先生
とある森Xの奥に住む、年齢不詳の魔法使い。かつては教職者として働いていたが、「子供って可愛い! 学校って楽しい! やりがいがあるから頑張れる!」と曇り無き眼で働く同僚たちとどうしても反りが合わず、退職。森の奥の小屋に引きこもり、ブログの有料記事の執筆や、魔法で生計を立てている。
勉学 ハゲム
村に住む中学生。ちょっと面倒くさがりで、ちょっと流されやすい。ウノミくんとは幼馴染み。早合点で突っ走りがちなウノミくんをウザいと思うこともあるが、小さい頃ウノミくんのお節介に救われたことがあるため、なんだかんだ彼の「善行」に、毎度付き合っている。
真偽 ウノミ
村に住む中学生。ハゲムの幼馴染み。困っている人のために行動できる優しさを持っている。が、リテラシーが弱く、他人の言うことをそのまま信じてしまいがち。昔ハゲムを救ったことは忘れている。本編ではずっと気絶している。
1. 消費税について知ろう!
さて、インボイス制度を理解するために、まずは消費税について知ろう。
消費税は知ってるよ! 買い物するとき、ちょっと上乗せされるお金だよね。
その通り。私たちは買い物のとき、消費税をお店に支払っているね。
あれ? 消費税って、国に納めなくちゃいけないんだよね?
そうだよ。
私たちが支払った消費税を、お店の人がまとめて、国に納めてくれているんだ。
仕入れ税額控除
え!?
なんか急に難しい言葉出てきた!
「しいれ ぜいがく こうじょ」と読むよ。
言葉の意味がわからなくても大丈夫。ハゲム君に理解できるとは思ってないからね。
仕入れ税額控除の内容について、今から簡単に説明しよう。
なんかトゲがあるんだよな……
例えば、このイラストを見てみよう。
農家クマさんが、お店クマさんにりんごを売る。このとき、100円のりんご1つに、税金は8円上乗せされる。支払う金額は108円だね。
うんうん。
お店クマさんは、108円で買ったりんごを、300円でブタさんに売る。
108円で買ったのに!?
お店クマさんも、利益がほしいからね。差額はお店クマさんの儲けになるよ。
あ、そっか。タダで受け渡しするだけだったら、商売にならないもんね……
300円のりんごには、税金は24円上乗せされる。ブタさんは、お店クマさんに324円支払うよ。
農家クマさんは、消費税として8円を国に納める。お店クマさんも、24円を納める。さぁ、このとき、300円のりんごのために納められた消費税は、合計でいくらかな?
えーっと……8円+24円で、32円!
……あれ? ブタさんが支払った消費税より、納められた消費税の方が多い……?
よく気づいたね!
この場合、りんごの消費税は、8パーセントと決まっている(2023年8月時点)。消費者は300円のりんごを買ったのに、最終的に32円の税金が納められているのは、おかしいんだ。
そこで、仕入れ税額控除をしてみよう。
農家クマさんが、消費税として8円を納める。お店クマさんは、24円の消費税から、農家クマさんが納めてくれる8円を引いて、16円を納めるんだ。さぁ、納めた税金はいくらかな?
農家クマさんの8円+お店クマさんの16円で……24円!
ブタさんが300円のりんごを買うときに支払った消費税と、ちょうど同じ金額になるね!
これが、仕入れ税額控除という仕組みだよ。
課税事業者と免税事業者
わぁ、また難しい言葉が出てきたよ……
「かぜい じぎょうしゃ」と「めんぜい じぎょうしゃ」だよ。
何でもかんでも「難しい」と言ってしまえば、理解することから逃げられると思っているのかい? 思考を放棄するな。
えっ、手厳し……
そんなハゲム君にもわかりやすいように、
課税事業者=クマさん
免税事業者=ウサギさん
として考えてみようか。
クマさんは、消費税を国に納めているよ。
???
うん。税金は、国に納めるものだもんね。
ウサギさんは、税金を納めないよ。
えっ!?!?
犯罪…………??
年収が1000万円以下のウサギさんたちは、国に消費税を納めなくてもいいんだよ。会社の規模が小さくても、消費税を納めなくていい分、クマさんよりも安く商品を提供できたりするんだ。
逆に、クマさんは年収が1000万円を超えていて、国に消費税を納めているよ。
そういうのもあるんだ。消費税の制度って、思ってたより優しいかも……。
軽減税率
(もう「難しい」とは言わないでおこう……)
ゲダイ先生、これは何?
「けいげん ぜいりつ」だね。
ハゲムくん、さっき仕入れ税額控除の話をしたとき、消費税は何パーセントで考えていたか、覚えているかな?
覚えてるよ! 8パーセントだった!
その通り、よく覚えていたね。
実は、日本では今、消費税は10パーセントということになっている。
あれ……? でも確かに、100円ショップだと110円支払ってる!
ゲダイ先生、間違えてたの?
そうやって己の無知ゆえの不可解を、すぐ他人のせいにするから、いつまでも成長しないんだよ。
このように、一部の商品の税率は、8パーセントのままなんだ。これが、軽減税率だよ。
僕が100円ショップで買った文房具は、飲食料品じゃないから、10パーセントだったのか!
先生がスーパーで買ったウォッカも、酒類だから10パーセントだね。
2. インボイスって何!?
ようやくインボイスについて知れるのか~!
その前に、1章で学んだポイントのおさらいをしようか。
えぇ~!? 早くインボイスの話に行きたいよ~。
1章で学んだことを踏まえると、インボイスのことが、よりわかりやすくなるんだ。基礎を疎かにするものは何やらせてもダメ。
ぐう正……
消費税について振り返ろう
では、ハゲムくんに問題だ。
次の図を見て、お店クマさんが納めなければいけない消費税を計算してみよう。
えぇ!? いきなり!?
大丈夫、1つずつ考えていこう。
まず、このお店クマさんは課税事業者だね。
消費税を納めなくてもいい免税事業者じゃないから、0円ではない、ってことかな。
その通り!
次に、それぞれの商品の消費税額を考えていこう。りんごとぶとうは、家で食べるものだとすると、それぞれ何パーセントの消費税がかかるかな?
えーっと……確か、軽減税率で税率が変わるから……
りんごとぶどうが8パーセント、テキーラは酒類だから10パーセントだ!
いい調子だね!
では、ハゲム君の言った通りの割合で、税額を出してみたよ。
えーっと、確か仕入れ税額控除で、農家クマさんが納めてくれる分を、引き算した分だけ納めればいいんだよね。
農家クマさんが納めてくれる消費税が、
8円+24円+50円=82円
ブタさんが払ってくれる消費税が、
24円+40円+80円=144円
だから、144円-82円=62円で、お店クマさんは62円の消費税を納めるよ!
大正解!!
素晴らしい、完璧だね!
やったー!! ゲダイ先生って、子供を褒めることもあるんだ……
今、ハゲム君が計算してくれた、税率ごとの仕入れ税額控除をするために、今後は、インボイスが必要になるんだ。
ようやく出た!! インボイス!!
インボイスの構成
これがインボイスの基本的な構成だよ。
いつ、何を、いくらで売買したのかと、①~③の項目が記載されていれば、それがインボイスなんだ。
インボイスって、書面だったんだ!?
え、というかこれ、レシートみたいなもの、ってこと……?
そう、インボイスとは、①~③の内容を付け加えただけの、領収書のことだよ。
えぇ……なんだか拍子抜けだな……。
③の登録番号、ってのはよくわからないけど、①の適用税率と、②の消費税額は、僕でも意味がわかるよ! むしろ、書いてくれてることで、仕入れ税額控除の計算がしやすくなりそうだけど……。
それがどうして、あんなに悪く言われてるんだろう……?
その理由は、③の登録番号にあるのかもしれないね。これから、インボイスの記載事項の1つ、登録番号について学んでいこう。
登録番号とは
登録番号って、何の登録をしてるの?
何も考えず「難しい」と言うのではなく、「何が疑問なのか」を自分で考えて訊ねることは、大切だね。
これは、インボイスを発行できる事業者になるために、税務署に登録するんだ。
ん? インボイスって登録しないと発行できないの?
そうだよ。しかも、インボイス発行のための登録は、課税事業者しかできないんだ。
じゃあ、免税事業者のウサギさんたちは登録ができないから、インボイスも発行できないってこと?
その通り。登録番号を記載していない領収書は、インボイスとは認められないからね。
インボイス、必要? 不要?
インボイスを発行するために、登録が必要なのはわかったよ!
でも、インボイスってどうして必要なの?
良い質問だね。実は、令和5年(2023年)の10月1日から、インボイスを発行してもらわなければ、仕入れ税額控除ができなくなるんだ。
仕入れ税額控除って、引き算した分だけ、消費税を納めるやつだよね?
それができなくなるって、どういうこと?
例えば、売る側にインボイスを発行してもらえた場合、
買った側は、これまで通り仕入れ税額控除ができるんだ。
じゃあ、農家クマさんがインボイスを発行してくれなかったら?
消費者から払ってもらった分の消費税を、全額払わなければいけなくなるね。
ウソ!?!?
じゃあ、早く全員登録して、インボイスを発行できるようにならなきゃ!
本当にそうかな?
だって、消費税を余分に払わなきゃいけなくなるんだよ!? 急がなきゃ!!
騒ぐな。
えっ。
次の図を見てみよう。
この場合、インボイスの発行が必要なのは、誰かな?
えーっと……。インボイスは売る側が発行するから、農家クマさんとお店クマさんが、発行しなきゃいけないよ!
残念!!
え゛っっっっっ!?!?
あっはっは、良い間違いだね!! あっはっはっは!!
そんなウケる?
いや~痛快痛快。正解は、農家クマさんだけだよ。
え~~!? インボイスは、売る側が発行しなきゃいけないって……
そうだよ。でも、インボイスって、何のために必要だったかな?
何のために……。消費税を国に納めるときの、仕入れ税額控除のため……?
お店クマさんの仕入れ税額控除のためには、農家クマさんが発行するインボイスが必要なんだ。じゃあ、ブタさんにはインボイスは必要かな?
ブタさんは、国に消費税を納めなくていいから、インボイスは必要無い、ってこと……?
じゃあ、ブタさんに物を売るお店クマさんは、インボイスを発行する必要は無いのか!
その通り! だから、お店クマさんは、インボイスを発行するための登録もしなくていいんだよ。
なるほど!
……ん? 国に税を納めなくていい……。
じゃあこの場合は、農家クマさんも、お店ウサギさんも、インボイスを発行しなくていい、ってこと?
素晴らしい! 筋が良いね、その通りだよ。
ブタさんはさっき学んだ通り、インボイスを必要としないね。つまり、お店ウサギさんがインボイスを発行する必要も無い。
お店ウサギさんも、免税事業者で国に消費税を納めないから、インボイスは必要無いね。つまり、農家クマさんがインボイスを発行する必要も無いんだ。
ちょっとややこしくて難しいけど……なんとなくわかってきたよ!
すなわち、課税事業者に何かを売る場合は、インボイスを発行する必要があるんだ。
じゃあもしかして、インボイスを発行しなくてもいい事業者も、結構いるのかな……?
検証! インボイスの噂
① 商店が潰れちゃう?
ゲダイ先生。この間、インボイス制度のせいで潰れちゃうお店がある、って聞いたんだけど……
ほう? 詳しい話を聞こうか。
インボイス制度が始まると潰れちゃう、インボイス制度には反対だ! って、地域の人たちが怒ってたんだ。
ハゲム君は、どう思う? この商店は、インボイス制度のせいで潰れてしまうのかな?
正直、話を聞いたときは、大変だ! って思ったんだけど……。
今はそうは思わないよ。
どうして?
まず、年収が1000万円以下だから、この商店は免税事業者だよね。インボイスを発行しようとしたら、課税事業者にならなきゃいけないと思うんだけど……。
その通りだね。ハゲム君の言う通り、これまでは免除されていた消費税を、納めなければいけなくなるね。
でも、地域の人々に、食料品や文房具を売っている商店なんだよね。たぶん、買いに来てくれるお客さんたちは、国に直接消費税を納めることの無い、消費者がほとんどなんじゃないかなぁ……?
つまり、どういうことだろう?
インボイスの発行が必要なのは、課税事業者に売るときだけだったから、この商店は、インボイスを発行する必要が無いと思う。
だから、免税事業者から課税事業者になる必要も無い。インボイス制度のせいですぐに潰れちゃう、とは考えられないよ。
素晴らしい!!
先生も、ハゲム君と同じように考えるよ。その商店について、先生は詳しくないし、他にもいろいろな事情があるとは思うけれど、少なくとも「インボイス制度のせいで経営が苦しくなる」ということは、無いように思えるね。
よ、良かった~!
② 同人誌が高くなる?
では先生からも1つ、この間小耳に挟んだ話をしよう。
インボイス制度が始まると、同人誌の値段が高くなる、というものだ。
同人誌って、出版社じゃなくて、個人が出す本のことだよね? インボイス制度と関係あるのかな?
同人誌は、作者個人が印刷所に依頼して、製本してもらったものを売っている場合もあるんだ。インボイス制度が導入されたことで印刷所の料金が上がれば、その分同人誌の頒布価格も上がる、ということだろうね。
なるほど! じゃあ、インボイス制度が始まったことで印刷所がどう変わるか、が問題なんだね。
上の3つの印刷所について、それぞれ考えてみよう。
印刷所Aは、元々課税事業者だね。お客さんの大手出版社さんはインボイスがほしいかもしれないけど、登録さえすれば発行できるよ!
印刷所Bは、免税事業者だよね。同人誌の印刷がメイン、ってあるけど、同人誌を作るお客さんは、インボイスが必要なのかな……?
同人誌で収益を出して、年収1000万円を超えているような人は、ほとんどいないと思うよ。ここでは、あくまで趣味で楽しんでいる消費者として考えてみよう。
それなら、インボイスを発行する必要は無いね! 課税事業者にもならなくていいから、インボイス制度が始まったことで変わること、ってのは無さそう。
最後に、印刷所Cだけど……。
お客さんに、1社だけ課税事業者がいて、あとは同人誌がメインだね。今は免税事業者のようだけど、この場合はどうなるかな?
課税事業者と取引するときは、インボイスを発行しないといけないんだよね。じゃあ、課税事業者になって、インボイスを発行しよう!
そうすると、消費税を納めなければいけなくなるから、経営が苦しくなってしまうかもしれないね。
あっ、確かに……。じゃあ、少しだけ値上げする……? でも、お客さんの中で、課税事業者は1社だけなんだよな……。
もしくは、インボイスは発行できません、と伝えて、これまで通り免税事業者として仕事をしていこうか。
でもそうしたら、お客さんの出版社さんが困っちゃうんじゃ……。
そうだね。インボイスを発行してもらえず、仕入れ税額控除ができなくなるから、別の印刷所に依頼するようになるかもしれないね?
えっ!!
そんなの、お客さんがいなくなっちゃって、印刷所Cも困るよ!
そう、これはかなり難しい問題なんだ。
どの事業者にも当てはまるような、絶対的な正解は無い。
インボイスを発行するかどうか。そのために、課税事業者になるかどうか。
それぞれの事業者ごとに、しっかり考えるべきだね。
3. 経過措置もあるよ!
うーん、インボイスを発行するべきか……課税事業者になるべきか……難しい問題だな……。
なかなか、すぐに決められることではないね。下手なことをすると、今後の経営にも関わってくるかもしれないことだ。
そこで、インボイス制度には経過措置というものがあるんだ。
経過措置?
経過措置とは、制度が大きく変わって、新しい体制に移っていくとき、なるべくみんなが困らないように取られる対応のことだよ。3章では、インボイス制度の経過措置について学ぼう!
仕入れ税額控除
あれ? インボイスを発行しないと、仕入れ税額控除が無くなっちゃう、って話じゃなかったっけ?
それがそうでもないんだ。
令和元年10月1日~令和5年9月31日の4年間の準備期間と、
令和5年10月1日~令和11年9月31日の6年間は、
経過措置として、インボイスを発行してもらえなくても、仕入れ税額控除が適用されるんだ。
そうなんだ! いきなり全部無くなっちゃうわけじゃないんだね! 良かった~。
令和元年10月1日に軽減税率の適用が始まった時点で、正確な税率と消費税額が記載されているインボイスは、必要だったからね。かなり待ってくれていると言えるんじゃないかな。
税率が2通りあって、それぞれ引き算して、って……かなりややこしいもんね。
令和5年10月1日以降も、仕入れ税額控除は適用されるけど、納めなければいけない税額は、少しずつ上がっていくんだ。
令和11年10月1日からは、仕入れ税額控除が本当に無くなっちゃう、ってことか。じゃあそれまでに、インボイスを発行したい人たちは、登録しないといけないね。
そうだね。この経過措置の間は、インボイスを発行する必要があるか無いかを、じっくり考えられる期間、というわけだ。
僕も、令和11年になる頃には21歳かぁ。
子供の成長速度、怖っ
2割特例
次は、令和5年10月1日~令和8年9月31日の期間に適用される、2割特例について説明しよう。
仕入れ税額控除の経過措置と、一緒に始まるんだね。
この期間に、インボイスを発行できるようになるため、免税事業者から課税事業者になる事業者もいるだろう。2割特例は、そんな人々のための制度なんだ。
これで、インボイスが発行できるようになったね! でも、これまでは免除されていた消費税を、納めなきゃいけなくなっちゃうんだよね……。
2割特例は、その負担を減らすためにある。
期間中に課税事業者になった免税事業者の納税額は、売り上げ税額の2割でいい、という経過措置なんだ。
さぁ、再三になるけれど、仕入れ税額控除の問題だ。今回は総売り上げだから、少し額が大きいよ。この場合、変身したクマさんが納めなくてはいけない税金はいくらかな?
農家クマさんが、インボイスを発行できる課税事業者だから、引き算して、30万円!
その通り! さすがハゲム君、もう慣れたものだね。
でもこの課税事業者クマさんは、期間中に変身したクマさんだから、総売り上げの消費税50万円の2割、10万円だけを納めればいいんだ。
これが、免税事業者から課税事業者になった人たちのための経過措置、2割特例だよ。
本来納める税より、20万円も減ってる!
ここでは主に2つの経過措置について学んだね。調べていくと、これら以外にも、いろいろな措置や補助金もあるんだ。
かなり手厚いね……!
そう、知れば知るほど、世の中の制度は意外と親切なことが多いんだよ。詳しく知ろうともせず、きっと政府や国が諸悪の根源に違いないと思い込み、責め立て、暴言を喚き続ける大人たちが、先生は大嫌いなんだ。
先生??
政治家だって、みんなと同じ人間なんだ。民意の代表として、日々頑張ってくれている人たちなんだ。一見おかしなことをしているように見えたり、馬鹿馬鹿しいことを言っているように見えたりしても、正しい知識を身につけようともせず他人の思想に乗っかることしかできない愚か者たちが、口汚く罵ったり、人格否定をしたりしていい存在じゃないんだよ。
ヤバ、なんかスイッチ押しちゃったかも! 先生!! ゲダイ先生!! 落ち着いて!!
……………………。
いや、すまないね。つい思想が出てしまった。
ちょいちょい危ういんだよな……。
おわりに
う~、大変だった!
でも、ゲダイ先生のおかげで、インボイス制度にかなり詳しくなれたよ!
それは良かった。
ただ、これだけ話しても、インボイスのすべてを学べたわけではないんだ。気になったところがあったら、ぜひ自分で調べてみてほしい。
わからないことは調べてみて、自分の頭で考える。その姿勢を、どうか忘れないでね。
ゲダイ先生……
う、うぅ~~ん……
ウノミくん!!
うぅ……あれ、俺、なんで寝てたんだろ……?
そうだ、俺、インボイス反対の署名を集めてて……それで……?
目が覚めて、本当に良かった!
ハゲム……?
ねぇ、ウノミくん。インボイス制度って、どんな制度なのか知ってる?
えぇ? ……いや、正直、そこまで……
じゃあ署名を集める前に、ちょっとだけ僕と、インボイスについて学ぼうよ!
……確かに、よく知らないものなのに、反対の署名を集めるとか、おかしいかもな。ハゲムは、インボイスについて詳しいのか?
ちょっとだけだけどね! あのね、インボイスっていうのは……
やれやれ、お喋りは先生の家じゃなく、公園でしてくれ、と言いたいところだけど……
若人の学びの場を、邪魔するべきではない、かな。
(おわり)